文化庁メディア芸術祭京都展:パラレルワールド京都 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 9月 22日 |
平成23年度文化庁メディア芸術祭京都展では、文化庁メディア芸術祭の地方展として、京都、広くは関西に、優れたメディア芸術を鑑賞する機会を提供します。また、地方展の特色として京都におけるメディア芸術の現在を紹介するとともに、本展の開催によって日本におけるメディア芸術のさらなる発展を目指します。 「文化庁メディア芸術祭」に出展される作品は、アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガとジャンルは様々ですが、みんなそれぞれ独自の仕方で私たちの生きているこの〈今〉という時代を表現している、という点で共通していると言えるでしょう。それでは、私たちが生きているこの〈今〉とは、いったいどんな世界なのでしょうか。 かつて、SFでは「タイムトラベル」というのが为要なテーマのひとつでした。そこでは为人公が時間の中を行き来して、一度しかない私たちの人生、取り返しのきかない人類の歴史を変えてしまいます。それは私たちが誰しも考えたことのある「もしあの時こうなっていたら…」という空想を実現するものです。そうした物語は、過去を変えたことによって複数の〈今〉が生じてしまうこと、いわゆる「タイムパラドックス」をめぐって展開されます。 このパラドックスを解釈するアイデアのひとつが「パラレルワールド」です。過去を変更することによって生まれた複数の〈今〉は、互いに矛盾するのではなくすべて並行して存在しているという考え方です。世界とは、実は多くの異なった世界の重ね合わせによって成り立っている――たくさんの「ウィンドウ」や「レイヤー」が重なり合ったパソコンの画面みたいなイメージでしょうか。 不思議な現実感覚ですが、ある意味でこれはメディア・テクノロジーに取り囲まれて生きる現代の私たちの現実感覚を、とてもよく表しているように思えます。現実は一枚岩ではなく、たくさんの異なったリアリティの層から出来ていて、私たちはたえずその間をシフトしながら生きている。そのようにして生きる私たちはまた、自分自身をも唯一のものとしてではなく、複数の〈自己〉の重なり合いと感じているのではないでしょうか。 このような「パラレル」な感覚はけっして病的で異常なものではなくて、新しい時代にふさわしい、しなやかな現実感覚・自己感覚を示すものです。そして「京都」という都市は、数多くの歴史的時間や文化的影響の集積によって、ある意味でメディアテクノロジー以前からこうした「パラレルワールド」的空間として発達してきたように思えます。 今回「平成23年度文化庁メディア芸術祭京都展」を開催するにあたって、こうした「パラレルワールド京都」という視点から、メディア芸術の多様な作品を展示する仕組みを考える機会とします。 公式ウェブサイト: http://plaza.bunka.go.jp/kyoto/ 全文提供: 文化庁メディア芸術祭京都展事務局 【会場と会期】 京都府京都文化博物館 京都国際マンガミュージアム 京都国立近代美術館 Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク] |
最終更新 2011年 10月 29日 |