原良介 展 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 4月 23日 |
原良介はこれまで、複数の時間や空間を一つの現象として描くペインティング作品を制作してきました。 今回は、これまで描かれていた具体的で具象的な状況設定を排除、または最低限までそぎ落とし、 「複数の時間」や「異なる空間」などの概念的要素のみで描こうと試みています。 原は、絵を描くということは次元の移動をおこなうことであると意識して制作しています。「絵画」が支持体という物質に絵の具という物質をのせた三次元のものを指すのであれば、「絵画空間」とはそこから生まれたイメージを概念的に二次元に置き換えたものになるということになります。三次元の空間において、二次元の空間と直接触れ合うということにより、絵画にのみ創り得るイメージを目指そうとしています。 展示される作品はそれぞれ1点1点が完結しており、壁ごとに独立したストーリーが紡ぎだされています。新たな展開を迎える原良介の新作ペインティングを是非ご覧下さい。 ※全文提供:ユカ ササハラギャラリー 会期: 2011年6月11日(土)-2011年7月16日(土) |
最終更新 2011年 6月 11日 |
絵画に切り取られた世界は、時間的にも空間的にも実世界と繋がりを断たれてしまうのだろうか。その答えを導く一つの視点が本展覧会から導かれるかもしれない。並んでいるのは、異なる時間を一つの構図の中に描き込む「異時同図法」のように、同じ人物を数人、違う位置に描くことで連続した動きを表すモチーフの絵画や、キャンバスの下に紙を加えて絵画の枠の外にも絵画の世界を続けて見せるような絵画作品7点。
前者の中には、何枚かのキャンバスを並べることで、一つの物語のような繋がりを見せるものがある。絵に描かれる舞台が1枚1枚変化しながら、同一人物が登場する点で、時間の繋がりを感じさせる。絵巻などを連想させる手法だろう。
一方、後者の作品は、分厚いキャンバスに描かれた風景画の下に、薄い紙に描かれたキュビズムの世界が繋げられている。展覧会場の白い壁との対比が鮮烈で、「絵画」が実世界から分断された一つの物として浮き上がってくる。
絵画の中に描けるものは何か、絵画が切り取るものは何か、じっくり考えたくたくなる展覧会だ。