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稲葉友宏・宮田聡志:matter
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 22日

宮田聡志《タイトル未定》2011年|感熱紙
Copyright © Satoshi Miyata
画像提供:CASHI

稲葉友宏は、昨年6月にCASHIにて開催された「100 degrees Fahrenheit vol.2」展において、鉄線のみで構築された全長約2mを越える鹿の彫刻を展示した若手彫刻作家です。鉄という硬い素材を自由に、まるで編みこんでいくように作られるその彫刻は、その細い一本一本の鉄線によって空間をも創造します。昨年度春に大学院を修了し、その屈強な彫刻への姿勢にますます期待の高まる作家です。

宮田聡志は、昨年1月「誠実な草」にて生活ゴミや日用品などを入れて漉いた紙を特製の額に入れた平面作品を展示した作家です。素材には一貫して日用品を用い、その性質の上に計算された工程を経て完成する彼の作品は、どこか人間味のない雰囲気を纏っています。既存の製作方法を解体、再構築するような制作方法を常に模索し続ける彼の視点は、わたしたちをポジティブに裏切るのです。

彼らふたりの作品は、極力洗練された色彩を用い、素材を洗練することによってそこにある作品の”モノ”としての魅力を増幅させます。そして、稲葉が用いている鉄という素材は、この世に生成されたその瞬間から、空気によってゆっくりと錆び、朽ちてゆきます。

また、宮田が今回展示する作品に用いられている感熱紙という素材も、やはり永久にその姿を留めておくことは出来ません。車のダッシュボードに置き去りにされたレシートのように、早ければ来年にも、その表情は大きく変わっているかもしれません。

色彩が溢れ、常に飽和状態の情報に囲まれた日常の中で生きるわたしたちは、ついついあらゆるものは永遠に、そこにありつづけてくれるかのような錯覚を抱きがちです。しかし、強固で儚い、残像のような彼らの作品たちは、わたしたちの生きるこの一瞬を共有すること、その尊さを我々に訴えかけてくれるでしょう。

※全文提供: CASHI


会期: 2011年5月6日(金)-2011年5月28日(土)
会場: CASHI
レセプションパーティー: 2011年5月7日(土)18:00 - 20:00

最終更新 2011年 5月 06日
 

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